抄録
播種後, 長日下で50, 60, 70および100日間育てた感光性品種「瑞豊」にGA3またはGA7を1個体当り1Oμgずつ, 地上約10cmの葉鞘部にガスクロマト用のマイクロシリンジを用い注入処理したのち, 異なつた回数の花成誘導処理(9時間明期+15時間暗期)を与えた. 誘導処理開始30日目にフロラル・ステージを決定した. その結果, エージ60日(播種後日数)のものでは, 無処理は6回の誘導処理を与えないと幼穂が分化しないが, GA3処理すると4回で幼穂が分化した. また誘導処理を6回与えたものではGA処理により, 花芽発育が著しく促進された. しかしGA7はGA3よりも効果が劣つた, エージ40日および70日のものでも同じような傾向のGA促進効果がみとめられた. しかし, エージがさらに進むと(100日)GAの促進効果は減少した. GA3は花成刺激の移動速度には影響しなかつた. エージ60日のものにGA処理し, 処理10日目に体内のGAを抽出してその稲体内におけるGAの持続性をしらべたところ, GA3は最初与えた量の0.5%, またGA7は0.07%しか検出されなかつたので, 稲体内では, かなり不安定であり, 早く代謝されるもののようである. 与えたGAが直接作用するのか, または, 内生GA生成のひきがねの役目をするのか確定的ではないがバイオアッセイの結果は, そのまま作用している可能性を示唆している. GA7は稲の伸長に対する作用自体もGA3より低いが, より早く代謝されることも, GA3より花成に効果の少ない原因の1つであろう. 検出された内生GAはバイオアッセイの結果から推論するとジバン環のC-2位に水酸基を欠くGAである.