日本作物学会紀事
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イネの小胞子初期冷温処理による雄性不稔 : 第13報 1次壁のないタペート肥大の微細構造
西山 岩男
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1976 年 45 巻 2 号 p. 270-278

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抄録
小胞子初期ころに冷温処理をおこなって1次壁のないタペート肥大をおこさせ, それを電子顕微鏡で観察した。タペート細胞の葯腔に面した表面にある1次壁が消失したのちにおこるタペート肥大の微細構造は, (1次壁のない)丘状, 炎状および風船状の各型をつうじて基本的に共通であった。肥大細胞の細胞質には膨潤性のものと収縮性のものとがみられた。ほとんどの場合に, 核の数がふえていないことおよび核分裂がおこらなかったことがたしかであった。他の細胞要素, エンドプラスミック・レティクラム, 葉緑体, ミトコンドリア, ゴルジ装置, 小液胞, 球状体, リボソーム(ポリソーム)などは肥大にともなって増殖した。これらの細胞器官は,すくなくとも肥大の当初においては, 概して形態的に正常であった。以上の結果および最近の知見をもとにして, 障害型冷害における冷温から不稔にいたる因果関係が考察され, あたらしい仮説が提出された。
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