日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
イネの小胞子初期冷温処理による雄性不稔 : 第15報 小胞子初期前後の弱い冷温処理が小胞子初期冷温による不稔発生に及ばす影響
伊藤 延男
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 45 巻 4 号 p. 558-562

詳細
抄録
穂ばらみ期の冷温によりもたらされる不稔が, イネの前歴・後歴によってどのように影響されるかを実験した。イネの前歴・後歴は, 小胞子初期の前後10日間に, 時期別に17℃で3~9日間の処理をおこなうことによってかえた。これらの前処理・後処理単独では不稔発生に及ぼす影響はほとんどないか, あるいは小さかった。しかし, 小胞子初期冷温処理(12℃3日間)と組合わせると, 不稔の発生を助長する効果が認められた。その効果は, 前処理・後処理の時期が小胞子初期に近いほど大きく, また, 後処理よりも前処理の方が大きい傾向を示した。前処理を3日間おこなった3試験区と対照区について, 小胞子冷温処理の開始直前に材料をとり, イネの窒素成分を分析したところ, 前処理によって全-Nたんぱく態-N含有率は減少し, 全水溶性含有率は増加した。その傾向は前処理が小胞子初期に近いほど大きくなった。また, 稔実歩合と全-N, たんぱく態含有率の間には有意な正の相関関係が認められた。
著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top