日本作物学会紀事
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パインアップルの物質生産に関する研究 : 第1報 明期の光強度がパインアップルのCO2交換とCO2収支に及ぼす影響について
野瀬 昭博城間 理夫宮里 清松村山 盛一
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1977 年 46 巻 4 号 p. 580-587

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抄録
パインアップルの栽培種スムース・カイエンより選抜された, 三菱系優良系統の個体を用いて, 地上部のCO2交換に及ぼす明期の光強度の影響を調査した。測定は, 植物体に充分給水した後, 昼温30.0±1.0℃, 夜温26.5±1.0℃, 11.5時間の明期, 12.5時間の暗期の下で行なった。得られた結果は以下のとうりである。1. パインアップルの地上部のCO2交換の日変化は, 4種の光強度下において, CO2を明期に放出し, 暗期に吸収するという, CAM植物に特有なパターンを示した(第1図)。2. 明期の光強度が上昇すると, 明期におけるCO2放出速度の極大値が小さくなり, CO2吸収がより早い時刻に始まり, その後のCO2吸収速度も大きくなった(第1図)。3. したがって, 明期における光強度の上昇は, CO2収支の各パラメター; 明期のCO2放出量と吸収量, 暗期のCO2吸収量, 1日の総CO2収支を物質生産的に有利な方向へ動かした(第2表, 第3図)。4. パインアップルの地上部は, 1日の総CO2収支から見た場合に, 個体の頂部の平均光強度で30 klx以下の光強度下では, その生産性が光強度により律速されることが明らかになった(第3図)。5. 明期におけるCO2吸収は, 蒸散量の増大を伴って生じた(第4図)。6. 以上の明期の光強度とCO2交換の関係は, 暗期におけるmalateの合成, 及び明期におけるmalate-poolからのカルビン回路へのCO2の供給という, CAM植物における炭素の流れの面から考察された(第2図)。
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