抄録
若い生長期にはある作物の空気中CO2濃度 (160~3,200ppm) に対する乾物生産の反応が, 培地の窒素水準によってどのように変るかを知ろうとしてイネ, ヒエ, トウモロコシを用いて実験を行った. その結果以下の事が分った.
1) イネでは個体の乾物生産に対するCO2とNの効果に相乗的な交互作用がみられた (第2, 3, 4表). それはNARの変化ではなく葉面生長を通じて現われるが (第1図), 特には分げつの増加に依存するところが大である (第2図).
2) ヒエではCO2およびNに対する葉面生長の反応はイネと同様であったが, CO2には対するNARの反応はイネより低く, それがGRの反応を低くしている原因と考えられた. またNに対するNARの反応はほとんど認められなかった (第4表, 第1図).
3) トウモロコシではNの水準にかかわらず, 葉面生長に対するCO2の効果はある程度みられるが, NARには対する効果がほとんどないため, 高・低N水準ともGRにはおよぼすCO2の効果はイネと比べると非常に小さかった. またNに対するNARの反応はイネ, ヒエと同様ほとんど認められなかった (第4表, 第1図).
4) 以上の結果, CO2濃度に対する乾物生産の反応には種間差が存在するが, それにははC3型作物 (イネ) とC4型作物 (ヒエ, トウモロコシ) との間にみられるCO2-光合成特性上の差がそのまま反映されるものではないことが分った.