抄録
温度, 日射量に対する各種の作物の生長パラメーターの変化とそれらの相互関係を調査する目的でC3型の夏作物2種, 冬作物3種およびC4型作物4種を用いて試験を行なった.
土壤によって網室で幼植物を栽培し, その葉面積, 各部乾物重を調査し, WATSON (1952) の式によって相対生長率 (RGR), 純同化率 (NAR) などを計算した. 試験は5月~11月に6回行なった. 結果の概要は次の通りであった.
1. 高温・強光 (日射) の場合にRGRのグループ間差異が明らかであったが, 低温・弱光の場合はRGRの値はいずれも非常に小さく, グループ間あるいは種間の差異も縮少した (Fig.4).
2. RGRの差をNARと葉面積比率 (LAR) の2つに分けて検討したところ, 高温・強光の場合はNARのグループ間の差が著しいが低温・弱光の場合はNARの値が非常に小さく, グループ間あるいは種間の差異も著しく縮少した (Fig.5). このNARの変動の原因については, 標準偏回帰係数を計算したところ, 温度と日射量だけでNARの変動の, C4型作物では96%, C3型作物では86%をそねぞれ説明できることがわかった.
3. 次に, RGRを構成する残りの1因子LARに対する温度と日射量の総合的影響を調べたところ, C3型の冬作物ではマイナス方向にかなり大きく働くのに対し, C4型作物ではほとんど影響なく, C3型の夏作物では両者の中間にあることが明らかになった.
また, LARの変化を比葉面積 (SLA) と葉重比 (LWR) に分けてみると, その変化は両者を通じて現われていると結論することができる (Fig.9).
4. RGRとNARとの間には非常に高い正の相間々係があるが回帰直線はC3型とC4型作物とではかなり異なる (Fig.6). このちがいは両グループ間のLARのちがいによることがわかった (Fig.7).
5. 比葉面積 (SLA) は一般にLARと密接な相関を示すが, C3型の冬作物の場合にはNARとも密接な相関を示したことから (Fig.8), このグループではRGRの種間差および気象条件の影響に対して, SLAがLAR, NARの両者を通じて関与するものと推定された.