日本作物学会紀事
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ヒマ果皮の光合成器官としての機能に関する研究
沢田 信一山田 晃弘
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1978 年 47 巻 4 号 p. 602-608

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抄録
ヒマ果皮の光合成器官としての機能について明らかにすることを目的として実験をおこなった。ガス代謝および14CO2取り込みは切断した果実および葉を用い, 光合成の光飽和条件下でおこなった。1. 光条件下においてもヒマ果皮は光合成によるCO2吸収を示さず, 暗呼吸の約十三分の一の速度のCO2放出を示した(Table 1)。 このCO2放出速度は脂肪蓄積を活発におこなっている果実において高かった。2. CO2を含む嫌気条件下においては, 果皮は光合成によるCO2吸収を示したが, その速度は低かった(Table 3)。3. 14CO2を含む気相中でのヒマ果皮の光合成による14CO2固定能は面積当りで葉のそれの38%に達した。以上の結果から, 光条件下での果皮によるCO2の放出は光呼吸によるものよりは, むしろ暗呼吸的なものが大きな部分を占めていたと考えられる。またこの暗呼吸的なCO2の放出が光合成によるCO2の吸収に比べ大きいため, 光条件下でのCO2代謝はCO2の放出を示したと考えられる。4. 光合成による14CO2固定直後においては, 固定された14Cは主に果皮中の水溶性分画(60%, 主に庶糖), クロロホルム溶性分画(3~5%)および水-クロロホルム不溶性分画(32~35%)中に見い出されたが, 種子からの各分画中にはほとんど見い出されなかった(Table 5, 6)。5. 14CO2固定後, 暗条件に24時間放置した果実においては, 全固定14Cの四分の三が果皮中に留まったが, 残りの四分の一の14Cは果皮から代謝された。発達の初期段階にあった果実ではその14Cは主として呼吸により放出された。またより発達の進んだ段階にあった果実では, 12%の14Cが呼吸によって放出され, その他の14Cは種子中に転流し, 水溶性分画(6%)および水-クロロホルム不溶性分画(4%)中に見い出されたが, クロロホルム溶性分画(1%)中にはほとんど見い出されなかった。したがってヒマ果皮における光合成は種子の脂肪蓄積に対しては寄与せず, 主に果皮の形成に寄与していると考えられる。
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