抄録
除草剤ベンチオヵーブがヒエにおよぼす影響について,組織的な観察を行った. その結果,ベンチオカーブを処理した個体では,(1)発育中の葉の周縁生長に異常がおこり,筒状葉や,葉周縁部に抱合様式の変化,内側屈曲,外側屈曲,截形化,波状化や密着などの現象を結果している. (2)鞘葉基部の隆起,葉の蛇行状弯曲,葉表面の波状起伏,連続する二枚の葉の癒着,葉組織の壊死,葉の垂直伸長や維管束発達の歪曲などがみられる. (3)茎頂鞘層部の尖端附近,ときには最尖端部に並側分裂が誘発されており,茎頂組織の細胞にいちじるしい液泡化や異常な伸長生長が認められ,茎頂は全体的に長い形となる,などの諸点が明らかになった. これらの結果は,ホルモン系の除草剤の作用にきわめて類似したものであり,ベンチオカーブは非ホルモン系除草剤であるが,それ自体またほその分解産物が何らかの機作を通して生長調節的な作用を発揮し,ヒエに形態形成的な影響をおよぼすものと考えられる.