抄録
夏期にガラス室で育成したC3型作物(イネ,ダイズ)およびC4型作物(ヒエ,トウモロコシ)幼植物を供試した. これらをグロース・チャンバーに移し,光(強光;48klx,弱光;27klx),気温(高温;昼28°/夜23℃,低温;昼23°/夜20℃)およびCO2濃度(高濃度;1000ppm,標準濃度;300ppm)を組合せた処理を各5日間行った. 処理前後に生育調査を行い,特に全乾物重と葉面積の値から乾物生長速度(GR),純同化率(NAR)および期間中の平均葉面積(A)を計算して比較検討したところ,以下の事柄が明らかとなった. 1. 光の効果 (1)標準濃度CO2・高温条件下では,弱光はNARの反応を低下させ,GRを抑制した. (2)高濃度CO2によるGRの促進は,光の強弱にかかわらずC3型作物がC4型作物よりも著しく大きかった. これは前者のCO2濃度に対するNARの反応が大きいからである. また,C3型作物ではCO2施与効果が強光によってさらに助長されることはなかったが,C4型作物ではNARを媒介とした,CO2と光によるGRの相加的促進が認められた. 2.温度の効果 (1)標準濃度CO2・強光条件下では,低温はNARと葉面生長の両者を抑制することを通じてGRを抑制した. (2)全ての作物においてCO2施与効果は高温により相加的に助長されたが,これは主としてNARの,一部は葉面生長の,促進に基ずくものである. ここでも温度の高低にかかわらず,C3型作物のGRの反応はC4型作物に比べてはるかに大であった.