日本作物学会紀事
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イネの葉のシュウ酸石灰結晶について
新発田 修治佐藤 庚星川 清親
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1981 年 50 巻 2 号 p. 210-216

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抄録
低温灰化処理後の偏光顕微鏡観察と葉断面の走査型電子顕微鏡観察により,3葉期のイネの葉身,葉鞘に多数の針状,角柱状,八面体状結晶の沈積が認められた. 針状結晶は主に葉内細胞に含まれ,角柱状,八面体状結晶は葉身,葉鞘の維管束鞘細胞と葉枕の柔細胞に含まれる. 針状結晶は他の結晶に比べて小型(長さ1.5~2.0μm,幅0.3~Q.5μm)であるが,1細胞当たり数本が束状に沈積しており,数は最も多い. 葉鞘は葉身に比べ結晶が少ない. X線マイクロアナライザーと組織化学的分析観察の結果から,これらの結晶はシュウ酸石灰であることが確認され,さらにX線回折により,針状結晶と八面体結晶はそれぞれシュウ酸石灰の1水塩と2水塩であることが明らかにされた. 登熟期の葉身のカルシウムの分画定量では,リン酸塩,シュウ酸塩が溶出するといわれる塩酸分画にカルシウムが多かった. この結果と灰化処理をした葉身にみられる結晶数から判断して,カルシウムの多くがシュウ酸石灰となって沈積していると考えられた.
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