日本作物学会紀事
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細胞融合による体細胞雑種の育成 : 第3報 交雑不和合性の組合わせ N tabacum+N. repanda 及び N. tabacum+S. sinuataの体細胞雑種について
長尾 照義
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1982 年 51 巻 1 号 p. 35-42

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抄録
Nicotiana tabacumのBright Yellow-Aurea (2n=48)の葉肉細胞のプロトプラストを素材に用い, これとN. repanda(2n=48)の葉肉細胞のプロトプラストおよびSalpiglossis sinuata(2n=44)の培養細胞のプロトプラストとをそれぞれ融合させて培養した. 融合後約90日目に, 雑種カルスを選抜した. 選抜は両親カルスのコンパクトな形状と白色性およびソフトな形状と緑色性を同時発現した, いわゆる, コンパクトな形状を有する帯緑白色のカルスに注目して行った. N. tabacumとN. repandaとの組合わせでは9個の雑種カルスを選抜したが, そのうち3個が異数体の植物を再生して開花期まで生長した. 再生植物中, 1個のカルスより再生した植物が正常な生長習性を示した. その植物は葉形, 花形, 花色などで両親の中間特性を示し, また, N. tabacum由来のニコチンを含有し. N. repanda由来のタバコモザイク抵抗性を発現した(第1~3図, 第1表). N. tabacumとS. sinuataとの組合わせでは42個の雑種カルスを選抜した. これらはいずれも茎葉を再生したが, そのうち, わずか3個からの植物が発現した. これらの雑種植物は異数体で, 葉形と葉の大きさにおいて, いずれか一方の親の性質に煩似したが, そのうち1個のカルスからの再生植物がN. tabacum由来のニコチンを含有した. また, これらの植物は多くの異常な生長習性を示し, 6か月以上経過した現在に至っても, 未開花で多数の腋芽を伸長させて生長中であるが, 枯死するものも観察された(第4図, 第2表).
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