日本作物学会紀事
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イネの小胞子初期冷温処理による雄性不稔 : 第23報 葯長, 花粉数と穂上位置による頴花の冷温感受性の差異
西山 岩男
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1982 年 51 巻 4 号 p. 462-469

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抄録

穂ばらみ期の冷温による不受精の発生において, 穂の上部あるいは1次枝梗の頴花が, 下部あるいは2次枝梗の頴花よりも感受性が高いという傾向は古くから観察されていた. 前報においてこの現象を人工気象条件下で再現したことを報告した. 本報においては, 冷温による不受精の発生を穂上の各位置ごとに調査して以下の傾向を明らかにした(第1表): (1) 2次枝梗の頴花は1次枝梗の頴花よりも受精率が高く, この傾向は個々の1次枝梗ごとにもはっきりしている: (2) 下位の枝梗ほど受精率が高く, これは1次枝梗と2次枝梗のそれぞれについてもあてはまる: (3) 個々の1次枝梗上で下位の頴花ほど受精率が高い. 穂上の各位置ごとに, 頴長, 葯長, 花粉数, 花粉の直径を測定した. 花粉の直径は穂上の位置による差異がなく(第4表), 頴の長さは概していえば受精と逆比例の関係にあった(第2表). 他方, 葯長および花粉数は, 受精率と上記のすべての傾向に関して比例的であり(第3, 5表), これら3者の間の相関は著るしく高かった(第5~7図). したがって花粉数が穂上位置による冷温感受性の差異の1原因となつていることが推定される. 上記の諸傾向に加えて, 下位1次枝梗上の頴花は上位1次枝梗上の頴花に比べて, 葯長あるいは花粉数が同じ場合でも受精率が高い傾向がみられた(第5, 6図). このことは, 花粉数以外にも穂上位置による冷温感受性の差異に影響する要因が存在していることを示唆している.

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