日本作物学会紀事
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サツマイモの根の周皮の起源
河野 恭広溝口 健
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1982 年 51 巻 4 号 p. 535-541

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抄録

サツマイモの根の周皮の起源をめぐって, 内鞘起源とする報告と皮層起源とする報告がある. また根の生長にともなって皮層起源の周皮が, 後に生ずる内鞘起源の周皮と置き換わるという報告もある. そこで, サツマイモの根の周皮の起源とそれに関係する皮層と内鞘の動向について, 組織発生学的に検討を加えた. 表皮と接する皮層の外縁部に位置する細胞層と, それに内接する細胞層の細胞は, 次の諸点で皮層柔細胞と異なっていた. (1) 表皮とこれら2つの細胞層との間には離生細胞間隙は観察されない(第1図). (2) 表皮と接する層の細胞の内方に面した壁は肥厚する(第2図). (3) でんぷん粒の集積がすくない(第2図). (4) 細胞の崩壊は起らない(第4図). これらの特徴にもとづき, この2つの層の細胞と皮層柔細胞とを区別し, 表皮と接する細胞層を外皮(exodermis), それに内接する細胞層を下外皮(subexodermis)と呼んだ. 根の周皮は, 下外皮の並層分裂によって生じた(第4図). 挿苗後35日に, 周皮は外皮の内側で完成した(第6図). この下外皮から生じた周皮は収穫期(挿苗後168日)まで機能した(第8図). 皮層崩壊は原生篩部側に位置する皮層に特に顕著に起った(第3, 4図). 崩壊しなかった皮層柔細胞は, 第1期と第2期形成層の働きによって周皮と中心柱との間に押しつめられた時, それらは垂層分裂を行った(第7図). 原生木部側に位置する崩壊しなかった皮層柔細胞は, 明らかに収穫期まで残った(第8図). また, 原生木部側の内皮は崩壊することなく, 収穫期においても特異的な形状のまま残った(第5~8図). したがって, 原生木部側に位置する皮層と中心柱との間の区別は, 収穫期においても容易であった. これらの結果から, サツマイモの根の周皮は内鞘に起源するのでなく, 下外皮に起源するものであり, その周皮形成層は収穫期まで機能し続けると結論した.

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