日本作物学会紀事
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粒大の異なる水稲品種の登熱過程に及ぼす遮光および枝梗切除処理の影響
加藤 恒雄
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1986 年 55 巻 2 号 p. 252-260

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抄録
粒大が大きく異なる水稲6品種を用い, 出穂期以降照度を対照区の約75%に減少させる遮光処理と, 一次枝梗を穂軸上の着生順序にしたがって一つおきに切除し一穂粒数を半減させる枝梗切除処理を行った. これらの処理が各品種の登熟過程 (粒重増加過程) に及ぼす影響を, 特に粒大との関係を注目しつつ検討した. また本実験では, 登熟過程を一粒 (籾) 当りの粒重増加速度, 増加期間, および最終粒重の3パラメータで捉え, 解析に供した. 枝梗切除処理は, どの品種に対しても粒重増加速度を増大, 増加期間を減少させた. 増加期間の減少程度は, 非大粒品種よりもBG 1やArborio J1のような大粒品種で小さく, その結果, この処理によって最終粒重は大粒品種において有意に増大した. 遮光処理は, どの品種においても最終粒重を減少させた. 粒重の減少の原因は品種によって異っていたが, 粒大との関連は認められなかった. 一方, 粒の着生位置を考慮すると, 粒重の減少程度は大粒品種ではどの位置でも同様であったが, 非大粒品種では二次枝梗上, または下位枝梗上の粒において特に大きいことが判った. 以上の結果より, 大粒品種の登熟過程は, 上記の処理によって同化産物の穂への転流量に変動が生じた場合, 非大粒品種とは異った反応を示すことが明らかとなった. 本実験における2つの処理は, 各々異なる年次に行われたが, 各年次の対照区を比較することにより, 登熟過程の年次の違いに対する反応性が早生品種と晩生品種では異なることが判った.
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