抄録
植物群落内の光環境に対する植物の生育反応を明らかにするため, 植物葉類似の分光透性を示す試作フィルター透過光(人工緑陰)と寒冷紗透過光(中性遮光)下で, 陽地植物としてイネ(日本晴)とダイズ(農林2号), 陰地植物としてカカオとウリカワを用いて2-5週間における幼植物の生育反応を調べた. 光強度は, 対照の白色強光区(BOCランプ+ハロゲンランプ, W比6.4:3.0)では708μmol m-2s-1 (400-700nm), 人工緑陰区および中性遮光区ではともに同157および73の明・暗2段階とした. 赤色光(660±5nm)と遠赤色光(730±5nm)の光量子比(R/FR)で表わした光質は, 対照区および中性遮光区では1.31-1.52, 人工緑陰区では0.26-0.51であった. イネとダイズでは, 遮光下で伸長促進, 葉の発達抑制および乾物生産の著しい低下がみられた. 伸長促進程度は, ダイズで大きくイネでは小さかったが, 両種とも人工緑陰下の方が同じ光強度の中性遮光下よりも明らかに大で, とくに処理初期(約1週間以内)に著しかった. 一方, カカオでは, 遮光によって茎の伸長, 葉の発達および乾物生産が著しく増大した. ウリカワでは, 葉の伸長促進, 葉面積の抑制および乾物生産の低下が起るが, その変化の程度は上記陽地植物よりも小さかった. カカオとウリカワに共通した反応は次のとおりである : a) 人工緑陰下の光質によってひき起される伸長促進反応は, 陽地植物と異なり, 処理初期に小さくその後増大する : b) 葉の発達は, 同一光強度レベルでは, 人工緑陰下でより強く促進される : c) 遮光下における乾物生産および葉面積当たり乾物重の相対値は, 陽地植物よりも明らかに高く, 人工緑陰の光質の効果は光強度およびR/FR比が高い場合に促進的に, 低い場合には抑制的に作用する. 葉緑素含量は, ウリカワでは遮光下で著しく増大し, イネでもやや大となったが, 他は大差がなかった. 葉緑素a/b比は, 遮光によってイネとダイズではやや低下したが, カカオとウリカワでは増大する傾向を示した. 人工緑陰下の光質は葉緑素含量および同a/b比の両方を低下させることが, 供試4種に共通して認められた. 以上から, 遮光下では, 陽地植物とくにダイズは弱光回避種と類似の反応をし, 供試した陰地植物は部分的に弱光耐性種に似た反応を示すことが判明した. 後者の高い弱光適応性は, カカオでは主に葉面積の発達により, ウリカワでは葉緑素含量の増加によると考えられた.