抄録
今日まで記載され, 認められているタケ亜科植物の属, 種について文献的に整理し, 類縁性を基に族でくくり表にまとめた. その結果109属, 1056種となった. タケ亜科はさらに木本性と草木性にわけられ, 前者の属は77%, 種は84%となり, 前者が圧倒的に多いことがわかった. タケ亜科植物はヨーロッパ以外の各大陸に分布し, 特にアジア, アメリカに多く, アフリカに少ない. 両半球とも熱帯・亜熱帯を中心に温帯に広がるが, 多雨地域に多く, 乾燥地には分布しない. 種数割合からみると, 種分化の中心は東アジアと大西洋モンスーンベルトにあるようにみえる. 東アジアの種数割合は30%以上, 南アメリカでは20%以上である. タケ亜科植物の熱帯・亜熱帯を中心とした分布型は, イネ科C4植物の分布型と規を同じくする. 雨の多い東アジアや南米太西洋岸はタケ亜科植物が多く, そのため全体的にイネ科のC4率をひきさげている. C4率はマダガスカル島が低く, 英・蘭・佛領ギニアは特に低い. これにはタケ亜科植物の高密度分布が大きく影響している. 木本性タケの分布は, 東アジアに特に多く, アメリカがこれにつぎ, 冷温帯にまでおよんでいる. 草本性タケは, 中南米に多く, アジアに少ない. 木本性と違い, その分布域は, 熱帯・亜熱帯に限られる. 木本性と草木性タケの分布圏の違いにつき, 雨量と温度の関係をもとにして解析をこころみた.