抄録
7種の雑穀類の1次根について, 基部近傍の横断面における通導組織の形態を比較観察した. 1. いずれの作物においても, 直径の大きい1次根ほど, 1次根の横断面に占める中心柱の割合が高かった(第1表). 作物間で比較してみると, 中心柱の割合は, モロコシとトウジンビエで高く, ヒエとジュズダマで低かった(第2図). 2. いずれの作物においても, 極数および内鞘細胞数はともに, 1次根の中心柱直径とほぼ比例的な関係にあった(第3, 4表). 3. 多くの作物では中心柱直径と後生木部大導管の数との間に直線に近い関係がみられたが, ヒエとキビでは, 中心柱直径の大きいもので後生木部大導管が相対的に少なかった(第4図). シコクビエを除く雑穀類では, 中心柱直径が大きくなるにしたがい, 後生木部大導管の平均直径が一定の値に漸近する傾向が認められた(第5図). 後生木部大導管の数および直径と中心柱直径との関係は, 作物の種類によって多様であった. 4. 以上のように, 1次根の通導組織(系)の量的相互関係には, いずれの雑穀類にも共通した面とともに, 作物の種類による固有の変動がみられ, 機能もまた多様ではないかと推察された.