抄録
栄養生長期におけるイネ品種の耐乾性を構成するイネの属性を明確にするため, 1986年には, 水稲3品種, 陸稲5品種を, 1987年には早晩性の異なる水稲6品種を用い, 土壌乾燥処理に対する生育反応の品種間差を, 乾物重および葉面積の増加量, 各生長パラメーター, 窒素吸収量, 分げつ数の対照区に対する変化割合に基づいて検討した。その結果, 処理による生育の変化には明確な品種間差異が認められ, 相対生長率 (RGR) の変化割合の品種間差は, 主に純同化率 (NAR) のそれに依存していること, 葉面積生長率の品種間差異は, RGR, NARと同じ傾向であることが明確になった。しかし, 窒素吸収量 (ΔN) については, NAR等の場合とは品種間差異の傾向が異なるとともに, 処理に対して, より早い時期から感受的であることが明確になり, 土壌乾燥下でNARおよびΔNを高く維持できる能力が, イネの耐乾性を構成する属性に係わっているものと考えられた。分げつの変化割合については, 分げつ性の高い, 早生の品種ほど耐乾性が小さい傾向にあったが, 例外も認められ, 耐乾性の評価にあたっては, 生長率の変化を基盤にしておくことの重要性が指摘された。また, イネの耐乾性の差異は, 水稲, 陸稲の別とは直接関連していないことが明らかになった。