抄録
わが国で現在栽培されているオオムギ品種のなかから, 六条皮麦, 六条はだか麦および二条大麦各4品種, 計12品種を供試して, 水耕栽培を行った播種後7日目の幼植物における硝酸イオン吸収を調査した. 25~1000μMの硝酸カリウム溶液(いずれの溶液も500μMの硫酸カルシウムを含んでいる)からの硝酸イオン吸収量を処理開始2, 4時間後に調査して, 吸収速度と培養液中の硝酸イオン濃度との関係をミハエリス=メンテンの酵素反応式で解析した. 供試した品種の中で, 25℃におけるミハエリス定数(Km)については50.9~111.7μM, 最大吸収速度(Vmax)については2.24~4.99μmol・gf.w.-1(総生体重)・h-1の変異の幅が認められた. KmとVmaxの間には有意な正の相関があった. KmとVmaxは温度の低下とともに低くなったが, その低下程度は品種間で異なっており, Kmについてみると15℃の値が25℃の値に比べて1/2以下になる品種から低下の認められない品種があった. Vmaxと幼植物の生体重, 根長, 第1葉長の間には相関は認められなかった. 硝酸イオン吸収速度が植物体の大きさと相関を示さないことは幼植物における硝酸イオン吸収は植物体の生理的要因に依存するところが大きいことを示唆している.