日本作物学会紀事
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イネ初期胚の微細構造と分裂様式
鈴木 克己谷口 武前田 英三
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1992 年 61 巻 2 号 p. 292-303

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抄録
イネ接合子では開花後12時間までに, 第1回目の細胞分裂が見られ, 細胞壁が胚軸に対してやや斜め横に生じ, 上部の細胞と基部の細胞からなる2細胞となった. 開花後18時間では上部の細胞は縦に, 基部の細胞では横に細胞壁を生じ4細胞胚となった. 開花後24時間では基部細胞由来の上位細胞が縦, 下位の細胞が横に細胞壁を生じ6細胞に, 開花後30時間では胚の上部及び中部の細胞は縦に細胞壁を形成してそれぞれ4細胞となり, 基部の2細胞を加えで計10細胞からなる幼胚となった. その後の胚では, 細胞分裂方向が下規則となった. 初期胚の細胞内部には, 層状の小胞体, カップ状のミトコンドリア, デンプン粒を含むカップ状のプラスチドなどを持つ細胞質が, 核の周囲に存在した. 周辺部細胞質には小液胞が多く見られた. 基部の細胞では上部の細胞に比べ液胞が大きかった. 花粉管の侵入しなかった助細胞は, 4細胞胚の時期には完全に退化した. 胚乳細胞の細胞質は, 胚の体積が増加し始めたのち胚の周辺近くで密に分布した.
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