抄録
稲作期間中に水稲に供給される地力窒素の量との関連が高く, 適正な基肥量判定の基となる簡易指標を得るため, 筑後川流域の灰色低地土水田土壌(細粒~中粗粒質)を対象に, アンモニア化成量(風乾土を30℃で4週間湛水静置後に生成するアンモニア態窒素量)の適用性について検討した. 湛水前に採取した水田作土のアンモニア化成量を測定するとともに, 同圃場の窒素無施用区の水稲窒素吸収量を地力窒素吸収量として, 両者の比較を行った. 室内実験により得た乾土100g当たりのアンモニア化成量(mg/100g)から, 同圃場において調査した作土深と容積重を基に, 作土重量で換算し, 作土10a当たりのアンモニア化成量(kg/10a)を求めた. このようにして得られた10a当たり化成量と地力窒素吸収量との間には高い相関が認められた. 10a当たり化成量に対する地力窒素吸収量の割合は, 調査圃場の平均でニシホマレが42%, ヒノヒカリが40%であり, 細粒および中粗粒質土壌間での相違はみられなかった. したがって, 10a当たり化成量を求めることにより, その4割を中生品種の地力窒素吸収量とみなすことができる. 以上の結果を基に, 10a当たりアンモニア化成量を水田土壌の地力窒素供給量の指標として, 水稲の収量性や基肥適量の診断のために活用することができた.