日本作物学会紀事
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Salicornia europaea L.の耐塩機構に関する研究 : I. Salicornia europaea L.生育期間におけるPHおよび浸透圧の変化
桃木 芳枝上村 英雄
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1994 年 63 巻 3 号 p. 518-523

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抄録
塩ストレスは, 最近の農業において重要な課題の一つである. アッケシソウ(Salicornia europaea L.)は, 多くの作物の耐塩性を検定するための比較植物としてよく利用される. しかし, アッケシソウの耐塩機構を明らかにしたデータは殆どない. 本報では, 自生アッケシソウの生育期間中における生育, pHおよび浸透圧の推移を検定した. さらに, 生育終期における植物体よりグリシンベタインを測定した. 北海道東部に位置する能取湖周辺に自生するアッケシソウは, 3月下旬に土壌中で発芽し, 生体重, 地上部および根の生育は, 5月下旬から8月下旬にかけて最も増加した. アッケシソウの開花は, 7月下旬に始まり, 8月下旬以降, 徐々に植物体は, 緑色から赤色に変化した. 植物体の茎および枝におけるpHは, 生育初期のpH 7.6から生育終期pH 8.8まで増加し, 同様に, 茎および枝における浸透圧も生育期間中に約650mOsm・Kg-1から2600mOsm・Kg-1までに増加した. さらに, グリシンベタインが生育終期のアッケシソウの地上部および根から抽出された. これらの結果から, 細胞浸透圧調節物質の蓄積が細胞内の浸透圧の制御に関与していることが示唆された.
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