日本作物学会紀事
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アブシジン酸に対するイネ葉身の気孔伝導反応の検出法
小葉田 亨原 慎一
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1994 年 63 巻 4 号 p. 638-642

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抄録

水ストレスを受けた植物体で作られるアブシジン酸(ABA)などの物質が気孔開閉におよぼす影響を知るための簡単な検査法を確立しようとした. 葉片の浸潰や散布のような葉面を湿潤させる方法ではポロメータ法による気孔伝導度測定はできず, また気孔の開くような光条件の基でイネ葉身は切断するとすぐに萎凋するのでさし葉への吸収法は難しく, 葉鞘への一定量の注入は組織が薄く困難であった. そこで生育したままのイネの葉身先端を切除して小型のバイアルにつけ, 試験液を吸収させポロメータで測定する方法を試みた. その結果, 葉身切除により始めの15分は葉身中央部の気孔伝導度は低下するもののその後は無切除の葉身とほぼ同じになった. バイアルからの液の吸収量は蒸散速度の増加にともない増えた. 蒸留水と10-3から10-8mol L-1までのABA溶液を吸収させると気孔伝導度は濃度に応じて低下した. ただし, はっきりした効果が現れるのには3時間以上かかり, 葉身によって吸収開始後の気孔伝導度に変動が認められた. これは浸潤法で気孔閉鎖部位を見るとバイアルを付けた葉身先端から中央に向かい徐々に気孔が閉じていくこと, 同一部位では葉身中央に比べ縁の方が閉鎖が早く, バイアルから遠いほどわずかな測定部位の変化が値を変動させるためと推定された. 従って, よりバイアルに近い部位を測定すれば, 短い時間で気孔開閉を少ない変動で測定できると考えられる. 以上から, 本方法を用いれば比較的簡単に栽培条件に近い環境でイネの気孔伝導度への各種溶液の影響を調べることができると結論された.

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