日本作物学会紀事
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Salicornia europaea L.の耐塩機構に関する研究 : II. 茎の表皮細胞における高浸透性
桃木 芳枝加藤 茂上村 英雄
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1994 年 63 巻 4 号 p. 650-656

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抄録

植物細胞がどのように塩ストレスに反応するかを理解するため, 自生アッケシソウ(Salicornia europaea L.)の生育期間における表皮細胞の塩化ナトリウム溶液に対する原型質分離濃度の推移を検討した. また, アッケシソウの無機イオン濃度と表皮細胞の塩化ナトリウム溶液に対する反応を, 他の塩生植物と比較した. さらに, 高濃度の塩化ナトリウム溶液に対する表皮細胞の反応をMS培地(低塩濃度)で生育したアッケシソウと比較検討した. 自生アッケシソウの茎における表皮細胞の塩化ナトリウム溶液に対する限界原形質分離濃度は, 生育期間中に1.6%から2.2%に上昇した. 生育終期のアッケシソウ体内における主な無機イオンは, 63 mM Na+イオンと107 mM Cl-イオンであった. MS培地で生育した植物の表皮細胞は, 自生アッケシソウの表皮細胞の約2倍の大きさとなり, 植物体の浸透圧は35-50%低かった. また, MS培地で生育したアッケシソウの表皮細胞における塩化ナトリウム溶液に対する限界原形質分離濃度は, 自生のものとほぼ同じであった. しかし, 高濃度の塩化ナトリウム溶液に浸漬した場合, 同処理の自生アッケシソウの表皮細胞に比べ, 過度の原形質分離を起こした. これらの結果から, 自生アッケシソウの表皮細胞は, 生育過程においてNaClを蓄積し, 蓄積したNaClを細胞内の浸透調節に役立てていることが示唆された. なお, アッケシソウの植物体内のNaCl濃度および表皮細胞の塩化ナトリウム溶液に対耐する原型質分離濃度は, 他の塩生植物よりも高いことが認められた.

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