日本作物学会紀事
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エピブラシノライドおよびアブシジン酸が土壌水分欠乏下に生育するソルガムに及ぼす影響 : 第2報 葉面散布処理による耐乾燥性増強効果の発現機構
徐 会連志田 篤彦二谷 文夫玖村 敦彦
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1994 年 63 巻 4 号 p. 676-681

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抄録

アブシジン酸(ABA)とエピブラシノライド(EBR)の耐乾燥性増強効果の発現機構について, 蒸散低下曲線から求めた気孔(TRsm)・クチクラ(TRcc)両蒸散速度およびそれらに関係する要素から検討した. 1) EBRとABAはTRsmを減少させ, 両者を混合する場合この減少程度はいっそう大きかった. 2) ABAはTRccを減少させ, EBRは単独ではTRccを減少させなかったが, ABAと併用すると, ABAの前記の効果を強めた. 3) 葉面灰色度(Gn)に対する各処理の効果はTRccに見られた傾向と完全に対応することから, 上記薬剤によるTRccの抑制は, ワックスの沈着促進を通じて惹起されたことが示唆された. 4) 切り葉を十分吸水させたうえ無給水で3時間蒸散させた後の相対含水率(RWC3h)と水不足下の植物の着生葉の相対含水率(RWCi.s)との傾向が一致していることから, TRsmとTRccの抑制による水分損失の軽減が乾燥下で葉の水分を高く保つ原因の一部となっていると推察された. 5) 気孔が閉じる時の相対含水率(RWCs.c)が対照 > EBR > ABA > EBR + ABAであったことから, これらの処理により, 水分損失を少なくするばかりでなく, 葉内水分不足の場合にもより正常な機能を維持する能力を強めることが示唆された. 以上から, 個体あるいは器宮のレベルで見られた耐乾燥性の生理的基礎の一部は, 気孔蒸散, クチクラ蒸散による水分の損失の軽減と, 組織内水分低下に対する生理的メカニズムの耐性の強化と考えられた.

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