日本作物学会紀事
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野生ハマボウフウ(Glehnia littoralis Fr. Schm.)の腋芽および成熟胚から誘導したカルスによる植物体増殖
桃木 芳枝三好 好午上村 英雄
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1995 年 64 巻 4 号 p. 767-776

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抄録
ハマボウフウ(Glehnia littoralis)は, 香りの良い野生野菜として人気があり, 生薬としても有用である. しかし, 栽培ハマボウフウの収穫期が短期間であるため値段が非常に高い. ここでは, 植物の種々の器宮と成熟胚からの植物体増殖を試みた. 植物の器宮では, 腋芽のみがBA1~5μM+NAA5μMを含むMS固体培地で10週間培養すると1個当たり約30本の不定芽を形成し, それからの不定根も良く形成された. 成熟胚の場合は, BA1μM+NAA5μMを含むMS固体培地に10週間置床すると成熟胚1個当たり約40本の不定芽が得られ, また, それらの80%が根を形成した. 一方, 成熟胚を2, 4-D1μMまたはNAA5μMを含む培地に置床すると, 成熟胚の90%がカルスを形成した. 2, 4-D1μMを含む培地から形成されたカルス塊を4週間振とう培養すると, カルス塊1個当たり45個体の胚状体が得られ, さらに, これらの胚状体1個体当たり約30本の不定芽が形成された. これらの不定芽は, 発根後健全な小植物体に生長し, よく馴化した. これらの結果から, ハマボウフウの増殖には, 成熟胚1個から得られたカルスを振とう培養し, 誘導した胚状体から不定芽を形成させる方法が, 腋芽や成熟胚から不定芽を形成させるより有効であると考えられる.
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