日本作物学会紀事
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イネ科作物4種の土壌乾燥に対する生長反応における種間差の機構
松浦 朝奈稲永 忍杉本 幸裕
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1996 年 65 巻 2 号 p. 352-360

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抄録
水分欠乏下で作物生産を実現するための基礎として作物の耐乾性機構を解明する必要がある. 4種のイネ科作物(ソルガム, トウモロコシ, ヒエおよびパールミレット)における土壌乾燥に対する成長反応における種間差を検討した. 4作物を夏季にビニルハウス内の砂土に播種し, 播種後l6日に灌水を停止した乾燥区と適宜灌水した湿潤区を設けた. 灌水停止により, 植物体の通水抵抗は2から21倍に増加した. 一方, それは土壌の水ポテンシャルを-0.004から-12.7MPa, 相対生長率(RGR)を15から27%, 純同化率(NAR)を17から34%および光合成速度を16から45%, それぞれ低下させた. RGRの低下はソルガムとパールミレットの方が軽度であったことから耐乾性の強い作物てあることが示された. 乾燥処理によるRGRの低下は主にNARの減少によるものであり, 光合成速度の低下には慨して気孔伝導度が関与することが判明した. 気孔伝導度と葉身木部の水ポテンシャルとの間には, 全作物において有意な相関関係が認められた. 日中の葉身の水分状態は, パールミレットとソルガムでは高く維持された. 根系は4作物共に140cmまで到達していた. 全根長は乾燥処理によりヒエでは変化せず, ソルガムとパールミレットではそれぞれ有意に増加し, トウモロコシでは有意に減少した. 以上のことから, 栄養成長期においてパールミレットとソルガムが強い耐乾性を示す理由は, 根長を増大させて吸水能力を維持することにより, 日中の葉内水分の低下を軽減し, 光合成やRGRを比較的高く保つことにあるといえる.
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