日本作物学会紀事
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酸素発生剤と粘土の混合種子被覆による湛水直播水稲の出芽促進
中嶋 泰則関 稔高橋 成徳
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1996 年 65 巻 3 号 p. 430-436

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抄録

数種類の粘土を16%の過酸化カルシウムを含有する酸素発生剤にそれぞれ混合して水稲種子に被覆し, これらを湛水土壌中に播種し, 出芽に及ぼす粘土混合被覆の効果を検討した. その結果, いずれの粘土の混合被覆によっても出芽が促進されたが, 植物堆積物由来の珪藻土1やモンモリロナイト系粘土の酸性白土1は促進の程度が大きく, カオリナイト系粘土のクレーおよびタルクでは小さかった. 土壌の酸化還元状態の視覚的調査に有効なメチレンブルーを供試し, 種子周囲の土壌酸化状態を観察したところ, 酸素発生剤の単独被覆に比べ, 粘土を混合被覆した種子の周囲の酸化域(青く発色した部分)が大きくなり, 酸化域の退色の程度も小さかった. つまり, 酸素域が大きく保たれ, 酸化域の酸化程度が高く維持されることが考えられた. 種子周囲の土壌酸化域の大きさは, 混合被覆資材の水中での崩壊性が大きいほど大きかった. また, 酸化域の退色程度は, 出芽促進効果が大きかった珪藻土1や酸性白土1の混用でとくに小さかった. 出芽促進に対する貢献度をみると, 酸化域の大きさより酸化域の色の濃さつまり酸化の程度が, 大きいことが明らかとなった. なお, 珪藻土1の混用は, 種子周囲土壌の酸化域の酸化程度を高く維持する能力が高いため, 乾もみ重量比0.25~0.5と少量でも出芽促進効果が大きかった.

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