日本作物学会紀事
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水稲の登熟に及ぼす登熟初期の非構造性炭水化物の影響
塚口 直史堀江 武大西 政夫
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1996 年 65 巻 3 号 p. 445-452

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抄録
登熟期後半に末登熟の穎果が存在するにもかかわらず, 葉鞘および稈に非構造性炭水化物(NSC)が蓄積する現象が認められることから, 水稲の粗玄米収量は登熟期の利用可能炭水化物量だけでなく, 穎果の炭水化物受容能力にも支配されることが示される. 穎果の炭水化物受容能力を支配する稲体要因およびその品種間差異を明らかにすることを本研究の目的とし, 様々な条件下で栽培した密陽23号と日本晴を用いて, 乾物およびNSCの経時変化を調査した. 単位面積当たりの籾数と精玄米1粒重の積に対する粗玄米収量の比率で定義した充填率と, 平均1粒重から求めた穂ぞろい後10日間の穎果のRGRとの間に正の相関が認められた. この期間はイネの胚乳細胞数が決定されるとされている期間に相当している. 穂ぞろい後10日間の穎果のRGRと, 同じ期間の穎果当たりの利用可能炭水化物量との間にも正の高い相関が認められ, 充填率は穂ぞろい後10日間の利用可能炭水化物量と密接な関係にあることが示された. 興味深いことに, 登熟初期の利用可能炭水化物量から決定される充填率は密陽23号のほうが日本晴より高いことが明らかとなった.
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