抄録
イネ(Oryza sativa L.)品種IR8の種子にアジ化ナトリウム(NaN3)を処理して得られたM2幼植物集団から短根変異体を選抜し, M3世代でも同様の表現型を示し, かつ分離個体も認められなかった4系統のうち, LM10幼植物の特性について述べる. LM10の種子根長, 冠根長及び側根長はIR8より顕著に短かったが, 冠根数は多く, かつ側根密度も高かった. しかし, 草丈は両系統の間に有意な差が認められなかった. 成熟胚及び胚内器官の大きさを比較すると, LM10の胚長及び胚幅はいずれもIR8より有意に小さく, 胚内幼根長及び幼根径はいずれも胚長及び胚幅と同様の傾向を示した. LM10の胚内根冠長はIR8との間に有意な差がなかったが, 根冠径は有意に短かった. また胚内幼芽長は草丈と同様両系統の間に有意な差が認められなかった. 冠根根端組織の観察によれば, LM10の分裂域での細胞分裂は正常であり, 分裂域の大きさもIR8とほぼ同じ程度であったが, 成熟域の皮層細胞長はIR8より顕著に短かった. 光に対する伸長反応性を調べたところ, LM10の茎葉の伸長はIR8と同様, 光照射によって顕著に抑制されたが, 種子根及び冠根の伸長はIR8と大いに異なり, 光照射によっで促進された. これらの結果から, 短根突然変異系統LM10はいままでに報告されているイネの短根突然変異系統とは異なる性質を有していることが明らかになった.