日本作物学会紀事
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水稲無緑化乳苗の生育に及ぼす育苗温度の影響
山本 由徳池尻 明彦新田 洋司
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1996 年 65 巻 3 号 p. 487-494

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抄録
育苗期間の温度条件(20, 25, 32, 37℃)が無緑化乳苗(暗黒下育苗)の生育に及ぼす影響について検討した. また, 極短期(4日間)育苗下での生育経過を明らかにした. 1)播種後の生育は32℃で最も速く, 田植機の植え付け精度上必要とされる苗丈7~8cmを確保するのに要した日数は3~3.5日であった. この場合の育苗期間の積算温度は約100~110℃であり, 他の温度条件と比較して少なかった. 苗丈7~8cmに到達した時点での葉齢は2.0~2.1, 苗地上部重は4~5mg, 胚乳残存割合は約50%で, 育苗温度による差異は認められなかった. 2)32℃・暗条件下で96時間(4日間)育苗した場合, 出芽(48時間)後, 葉齢は72時間目まで, 苗丈, 種子根長は96時間目までほぼ直線的に増加し, 96時間目の葉齢は2.0~2.1, 苗丈8~9cm, 種子根長約7cmであった. また, 胚乳残存割合は出芽時の75~80%から直線的に低下し, 96時間目には約40%となった. 鞘葉節冠根は, まず種子根上部の左右2本(a1, a2根)が出現し, 続いて種子根の反対側の左右の位置にさらに2本(b1, b2根)が出現した. そして, 種子根の左右の冠根の中央部に1本(c根)出現し, 最多で5本出現した. しかし, c根の出現割合は少なく, b根の出現には品種間差が認められた. 96時間目の鞘葉節冠根数は3.0~4.1本で, 全鞘葉節冠根長は7~9cmであった。
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