日本作物学会紀事
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水稲良食味育成品種の遺伝的背景
吉田 智彦今林 惣一郎
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1998 年 67 巻 1 号 p. 101-103

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抄録
最近育成の水稲良食味品種の遺伝的背景を明らかにし, 普及品種の遺伝的ぜい弱性を避ける方策を探った.福岡農試で良食味を目標にして育成された17品種(良食味品種群)と, 主要な新旧27品種との間の近縁係数を計算した.また九州農試と宮城農試で育成された多収耐病虫性の6品種(多収品種群)についても同様な計算をした.コシヒカリとの間の近縁係数は, 良食味品種群では平均で0.477と高かったが, 多収品種群では0.161と小さかった.多収品種群と近縁度の高かった品種はシンレイ, トヨタマ, ホウヨウ, 十石など過去に北部九州に広く普及していた品種で, 一方これらの品種と良食味品種群との近縁係数は小さかった.シンレイ, トヨタマなどは地域に適した遺伝的背景を有していると考えられので, 今後の新品種育成のためには, 良食味を維持しつつ, これらの品種に集積されてきた有用遺伝子を積極的に導入する必要があると考えられる.
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