抄録
乳苗と稚苗の移植直後の生育と苗体内(地上部)の成分含有率の変化を比較し, 移植に伴う体内成分の変化の様相から乳苗の活着特性について検討した.1)稚苗では移植後3日目にかけての草丈の伸長および出葉が停滞したが, 乳苗ではこのような停滞は認められなかった.乳苗では移植後2~3日目頃から第1節冠根の発生がみられ, 葉齢4.0付近までは葉齢に対する発根時期が稚苗にくらべて早かった.2)乳苗の窒素(N)含有率は移植後直ちに, またリン(P)とカリ(K)含有率は移植後3日目から増加に転じたが, この時期は稚苗にくらべて2~3日早かった.移植直後の乳苗地上部の無機成分蓄積に対する胚乳の寄与率は成分によって著しく異なり, P>N>Kの順に高かった.3)乳苗では移植直後から全糖含有率が減少したのに対して, 稚苗では移植後3日目にかけての植え傷みに伴い, 全糖含有率の増加が認められた.4)乳苗では移植後も停滞することなく胚乳中のデンプンの糖化が進み, 生長に利用されたものと考えられた.胚乳中のデンプンは移植後7日目にほぼ消尽した.5)活着後の無機成分含有率は乳苗で, また炭水化物(全糖+デンプン)含有率は稚苗で高く推移した.6)以上の結果より, 乳苗では稚苗にくらべて移植に伴う植え傷みが小さく, 活着がスムーズで移植直後の苗地上部に糖の蓄積がみられず, 無機成分含有率の回復が早いことが明らかになった.