抄録
クロタラリアの水田転換畑への緑肥としての導入を検討するために, 大型コンテナポットを用いて異なる地下水位条件を設定し, その生育についてすでに導入が試みられているセスバニアと比較検討した.さらにそのすき込みが後作ホウレンソウの窒素吸収に及ぼす影響を重窒素標識肥料を用いて調査した.すき込み時の乾物生産量はクロタラリアがセスバニアよりもやや少なかった.両作物ともに高水位条件下では低水位条件下よりも生育量は減少したが, その程度には両作物間で大きな差異は認められなかった.後作ホウレンソウの収量ならびに窒素吸収量は, すき込みによって増大し, いずれの緑肥作物のすき込みにおいてもすき込み量の少なかった高水位区において多く, 両作物間で比較するとクロタラリアすき込み区でやや少なかった.施肥窒素の利用率はすき込みによって増大した.後作ホウレンソウの吸収窒素に占める土壌および緑肥由来の窒素の割合は86-92%と高かった.すき込み量が後作ホウレンソウの生長に及ぼす影響を1/5000aワグナーポットを用いて調査したところ, すき込み後30日における土壌の無機態窒素の生成量とホウレンソウの生育量とは必ずしも一致せず, すき込み試料からの生育阻害物質の放出が示唆された.