日本作物学会紀事
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酸素発生剤を用いない湛水土壌表面直播栽培の出芽苗立ち評価(品種・遺伝資源)
内村 要介佐藤 大和松江 勇次
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2001 年 70 巻 3 号 p. 393-399

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抄録
さらなる省力, 低コストの水稲直播栽培に適する品種育成のため, 酸素供給剤を粉衣しない種籾の出芽苗立ち安定化についての基礎的知見を得る目的で, 72品種を供試して湛水土壌表面直播栽培を行い, 出芽苗立ち特性の優れる品種の評価および圃場中の水温と溶存酸素濃度の測定を行った.播種後14日間の圃場中の水中の溶存酸素濃度は約4.7~11.6mgL-1(飽和量の約50%~過飽和), 水温は日平均21.8~29.0℃で推移し, 水稲種子の発芽, 根の伸長に問題はほとんどなかった.供試した72品種はすべて発芽率が80%以上あったにもかかわらず, 播種14日後の出芽率は0~89%の変異幅が認められた.出芽率が80%以上と出芽能力が優れた11品種が認められ, そのうち8品種の譜系図に旭または朝日が認められた.転び苗および浮き苗の発生率については4%~61%の変異幅が認められた.出芽能力が優れた11品種において, 出芽率と転び苗および浮き苗の発生率との間には相関関係は認められず, 出芽率が80%以上で転び苗および浮き苗の発生率が10%以下の苗立ちが優れた品種, 神力, はえぬき, どまんなかが認められた.出芽率の高い品種は, 千粒重が重く, 比重1.1以上の割合が高く, 初期生育が優れた.転び苗および浮き苗の発生が少ない品種は, 種子の比重が1.1以上の割合が高く, 種子根の平均伸長速度が遅かった.これらの知見は, 酸素供給剤を用いない省力, 低コスト直播栽培で出芽苗立ちを安定化させる水稲品種育成のための交配母本選定に当たり有効な情報になるものであった.
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