日本作物学会紀事
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湛水直播栽培した水稲の生育と倒伏およびこれに関係する性質の品種間差 : 苗立ち密度に着目して(栽培)
三王 裕見子大川 泰一郎相沢 奈美江平沢 正
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2001 年 70 巻 4 号 p. 515-524

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抄録

日本晴,中国153号,タカナリを播種密度を3段階にかえて散播湛水直播栽培した.苗立ち密度は日本晴,中国153号は約60~240本m-2,タカナリは約40~130本m-2の範囲にあった.湛水直播水稲は,慣行移植栽培した水稲に比較して,すべての苗立ち密度で茎数の増加が大きく,穂数が多く,単位面積当たり穎花数は多くなる傾向があった.日本晴は登熟期に著しく倒伏し,苗立ち密度の高い水稲で倒伏程度が大きく,収量の減少程度も大きかった.方,中国153号,タカナリでは登熟中期に軽微な倒伏が認められただけで,収量は慣行移植水稲に比較して低くなることはなく,むしろ高い場合もあった.倒伏はすべてなびき型であった.以上の結果から,散播湛水直播栽培した水稲は倒伏しなければ,高い生育補償能力と密植適応性を示し,苗立ち密度の適正域の幅が広いことがわかった.なびき型倒伏に関係する下位節間の茎(葉鞘付き)の曲げ剛性は,中国153号は葉鞘の寄与率が大きいことによって,タカナリは稈の曲げ剛性が大きいことによって,それぞれ大きく,日本晴は稈の曲げ剛性が小さいことによって小さかった.日本晴では断面二次モーメントが小さいことによって稈の曲げ剛性が小さかったが,倒伏程度の小さかった苗立ち密度の低い水稲は,ヤング率が大きいことによって稈の曲げ剛性が大きくなっていることも併せて認められた.このことはなびき型倒伏に関係する稈の曲げ剛性を高めるためには断面二次モーメントとヤング率の両方を高めることが重要であることを示している.

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