日本作物学会紀事
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低農薬栽培における栽植密度が水稲の生育,収量と穂いもち発生に及ぼす影響(栽培)
前田 忠信
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2002 年 71 巻 1 号 p. 50-56

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抄録

本田初期に除草剤1回と殺虫剤1回の農薬使用という低農薬水稲栽培条件で,コシヒカリを用いて堆肥連用水田と化学肥料(化肥)連用水田で1991~1994年に栽植密度(密植約25株/m2,疎植約17株/m2)の違いが生育,収量と穂いもち発生に及ぼす影響を検討した.4年間の平均で,堆肥連用・化肥無施用区で密植は穂数が多かったものの,1穂籾数が少なかったため,m2当たり籾数が同程度となって,収量は疎植と同じであった.堆肥連用・化肥少肥区と化肥連用・少肥区では,いずれも密植は穂数が多かったことによるm2当たり籾数の増加によって収量は高かった.化肥連用・多肥区では,密植で穂数の増加によってm2当たり籾数は多かったものの,登熟歩合が低く,玄米千粒重が軽かったことによって,収量は低かった.穂いもちはいずれの生産年においても密植で多く発生し,特に化肥連用・多肥区で発生程度が高かった.害虫の発生程度は密度間には明瞭な差は見られなかった.不良天候年と好天候年で比較すると,両年とも,堆肥連用・化肥少肥区の密植で収量が最も高く,特に好天候年で密植と疎植との差が大きかった.化肥連用・多肥区の密植は,好天候年でも過繁茂で乾物生産の低下,種いもちの多発生で,疎植に比べ収量は低かった.低農薬栽培条件では,密植は堆肥連用・化肥少肥および化肥連用・少肥で穂数の増加によるm2当たり籾数確保に有利に働き収量が高い傾向であった.一方,化肥連用・多肥では,密植は過繁茂,乾物生産の低下および穂いもちの多発生をまねいて収量は低かったことから,低コスト・安定性からも疎植で収量向上を検討する必要があると考えられる.

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