中国の色譜としては代表的なものとして,「色譜」(中国科学院,1957年)と,「中国の伝統色」(大日本インキ化学,1986年)とがある.「中国の伝統色」の応用は主に美術・デザイン方面にある.「色譜」の応用は「(動物,植物などの)生物学,鉱物学,印刷染色,絵画などの各領域」であり,「中国の伝統色」に比べてその応用分野は幅広い.「色譜」はその成立過程や編集関係資料などは明らかでないとされている.近年,インターネットの普及によって,世界中の種々様々な情報がアクセス可能となった.このことは中国においても同様である.本研究では,「色譜」の編集委員達について調査を行い,それを通して「色譜」の成立背景を考察した.併せて,関係資料として,特に,「色譜」が参考とした「ロシアのボンダルツェフ色譜」を入手して「色譜」との対比を行った.その結果,「色譜」と「ロシアのボンダルツェフ色譜」はその色と色名において顕著な類似性は見られなかった.「色譜」は中国の自然,文化を反映して,色,色名などを幅広い分野にわたって独自に作られたものと考える.色名造語も自由闊達で,多種多様である.