日本色彩学会誌
Online ISSN : 2189-552X
Print ISSN : 0389-9357
ISSN-L : 0389-9357
100 hue testの制限時間を短縮した評価法を用いて示された大学生の芸術系サークル経験による色識別力の向上
川端 美穂川端  康弘佐々木 三公子高橋  文代笠井 有利子
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 44 巻 4 号 p. 163-

詳細
抄録

 100 hue testの総エラー値(TES)について,大学生280人を対象に制限時間が120秒と短縮条件の90秒の2群に分けて調査を行った.90秒条件において一般3色覚者の色識別力に大きな個人差が見られ,非常に良好な色識別力(TES=0)を有する人から異常3色覚に近い成績(TES=184)の人まで多岐にわたることがわかった.TESの分布は90秒条件の方がより典型的な正規分布を示し,120秒条件はTES=0で床効果がみられる.一般3色覚者では,3年以上芸術系のサークルや習い事などの経験を持つ,色識別との関わりが深い人のTESは,経験がない人や3年未満の人のTESを有意に下回っている.この傾向は120秒条件よりも90秒条件で顕著にみられる.この色識別力における個人差は日常生活における色に関する経験や学習の影響が大きいようであり,高次の視覚過程における高い可塑性が反映されていると考えられる.

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本色彩学会
feedback
Top