日本色彩学会誌
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簡便な中心窩イメージング法
小寺 宏曄
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2020 年 44 巻 5 号 p. 211-

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抄録

 人の視覚は空間可変解像度特性をもち,網膜受容野の解像度は一様ではなく,中心窩(Fovea)では高解像度で標本化され,周辺ほど低解像度となる.この可変解像度の写像機能は,大脳の第一次視覚野V1が担っている.この空間的な写像構造はレチノトピー(Retinotopy)と呼ばれる.網膜からV1への写像は,Schwartzの対数極座標変換(LPT: Log-Polar Transform)でモデル化され,網膜受容野像は,V1からの逆変換LPT -1により再生される.この再生処理を中心窩イメージング(Foveation)といい,空間情報が視野中心に凝縮されるので,画像圧縮,パタン認識やロボット視覚等,広く応用されている.既報で, Foveationの基本特性と領域抽出への応用,及び視覚的表示効果を紹介した.網膜像は周辺視による自然なボケを伴い,質感表現にも適する.しかし逆変換の煩雑さがネックであった.続報では,ガウスボケの対数リングマスクによる高速Foveation法を提案したが,多段のリングマスクの生成と合成はなお複雑であり,さらなる簡素化が望まれる.本稿では,Schwartz理論の逆変換LPT -1を用いずに,ポジとネガのガウスボケマスクを用いた新規かつ簡便なFoveation法を提案し,再生誤差の評価を行ったので報告する.

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