日本色彩学会誌
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照度と色温度が絵画の印象に与える効果
西川 恵北岡 明佳
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2021 年 45 巻 1 号 p. 3-

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抄録

 現在, 展示照明には資料保存の観点からICOMが50 lx(約2900 K)や150-180 lx(約4000K)などを推奨している.しかし, 日常生活空間が約200-1000 lxであることと比較するとそれらはやや暗く, また, 作品の印象の研究ではより高照度が効果的と示唆され, 色温度に関しては統一的な見解が得られていない.本研究では先行研究より実際の展示に近い環境で, 実験1で照度, 実験2で色温度, 実験3で順応時間を設定した場合の照度の効果を調べた.更に, 絵画の美しさや好ましさ等に加えこれまで殆ど研究されてこなかった恐ろしさや不気味さなど様々な印象を検討した.その結果, 実験1では50 lxや150 lxより1350 lxでより美しく, 好ましく等感じられたが, 実験2と実験3では違いがみられなかった.本研究と他の先行研究の結果から, 順応が十分でない場合や50 lx以下の極めて暗い照明の場合美しさ等は減じることが示唆されたが, 単に明るい照明のとき美しく見えるわけではないことがわかった.また, 絵画の恐ろしさ, 不気味さ等は主に暗い照明や青白い照明によってより演出されることを明らかにした.

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