自然環境下において植物は様々なストレスを受け、それにより生育も大きく制限される。環境ストレスによる植物の生育障害の一要因として葉緑体で生成される活性酸素が挙げられる。通常、活性酸素はwater-water cycleで消去されるが、ストレス等によりこの系が十分に機能しない場合には残存する活性酸素が植物の生体分子を酸化し、生体成分の破壊や機能低下を引き起こす。このことから、植物のストレス耐性を向上させる方策として、活性酸素除去系を強化することが有効と考えられている。田中ら(Plant Sci. 1999. 148 : 131-138)は酵母ミトコンドリア由来のMn-Superoxide dismutase(Mn-SOD)を葉緑体内で高発現させたイネを用いて塩ストレス下でのクロロフィル蛍光収率および電子伝達速度を測定し、対照イネよりも高い値を維持することを示した。今回、我々は同じ植物材料を用いて塩および複合ストレスがMn-SOD導入イネの生育に及ぼす影響等について検討したのでその結果を報告する。