抄録
著者らはこれまでに, 栽植様式の異なる湛水直播水稲, 移植水稲の乾物生産特性を比較し, 両水稲とも(1)個体密度がほぼ等しい時には1株1本立て水稲(以下単に1本立て)は1株3本立て水稲(以下単に3本立て)に比較して, 幼穂形成期以後の乾物生産量が大きく, その結果子実収量が多くなること, (2)1本立ての乾物生産量が大きくなる要因には, 受光態勢が良いことと窒素蓄積量が多いことによって登熟期間中の光合成速度を高く維持することがあげられること, を明らかにした. 1本立て水稲は茎当たり冠根数が多く, 茎基部からの出液速度が登熟期間中高く維持されていることから, 1本立て水稲は吸水能力が高く, したがって晴天日の日中の水ストレスの程度も小さいことが予想される. そこで本報告は, 湛水直播栽培した水稲を用いて, 根の吸水能力の指標となる水の通導抵抗と光合成速度の日中低下程度を1本立てと3本立てで比較した.