日本交通科学学会誌
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自動車運転に影響を及ぼす医薬品の処方における薬局薬剤師の対応
髙橋 佑介松元 一明黒田 裕子大原 整木津 純子
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キーワード: 運転, 医薬品, 薬剤師, 副作用
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2016 年 15 巻 3 号 p. 29-37

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抄録

薬局薬剤師が、医療用医薬品添付文書に自動車運転を禁止するよう記載されている医薬品が処方された際に、どのような対応をとっているかを把握することを目的にアンケート調査を実施した。滋賀県薬剤師会に所属する薬局497施設を対象として、2014年12月1日〜2015年1月15日にアンケート調査を行い、116施設から回答を得た。薬局に自動車で来る患者数は「大変多い」、「多い」を合わせて78.5%であった。自動車運転への影響について必ず注意喚起している医薬品として、「抗不安薬」、「睡眠薬」、「抗アレルギー薬」、「疼痛治療薬」、「抗てんかん薬」、「抗うつ薬」、「抗パーキンソン病薬」、「糖尿病薬」が半数以上の施設で挙げられた。該当医薬品が18歳以上の患者に処方された際に、自動車運転についての患者への確認は、ほとんどの施設で行われていたが、11施設(9.5%)のみ「とくに尋ねない」との回答であった。日常的に自動車運転をしている患者に該当医薬品が処方された時の対応について、「服用中は自動車運転をしないように服薬指導する(自動車運転禁止)」と回答した施設は61施設、自動車運転禁止を選択しなかった施設は53施設あった。禁止以外を選択した施設の自動車運転を禁止する服薬指導をしない理由については、「原疾患の治療には確実に服薬することが重要である」、「以前より服用し該当する副作用の発現がないので問題ない」、「患者の日常・社会生活に支障が出る」との回答が得られた。本研究より、自動車運転を禁止することにより日常・社会生活に支障が出る患者もおり、すべての患者に一律に自動車運転を禁止する服薬指導をするのは困難であることが示唆された。医薬品、患者によっては、服用開始時は運転を禁止し、状態を確認後に注意しながら運転を再開できるケースもあると考える。今後、該当医薬品の処方に関して患者のQOLも考慮した具体的な指導マニュアルの作成が望まれる。

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