重大な交通事故によって生命に危険を及ぼす傷害を負った場合、医師による治療までの時間が長くなると、救命率が低下するとともに、後遺症発生リスクも高くなる。より早く医師による治療を開始するため、先進自動事故通報システム(Advanced Automatic Collision Notification, AACN)を活用したドクターヘリおよびドクターカーの早期出動判断を目的とするD-Call Netの本格運用が2018年より開始され、医師の現場派遣が行われている。しかしながら、現行の自動通報対象は自動車乗員に限られており、歩行者や自転車乗員などの交通弱者、および二輪車乗員への適用範囲の拡大が強く望まれている。そこで我々は、ドライブレコーダ画像を用いた深層学習手法による交通弱者衝突検出モデルの作成を試み、その有効性を示してきた。
本研究の目的は、四輪車対二輪車事故が記録されたドライブレコーダ画像を基に、深層学習手法を用いた衝突検出モデルの作成とその評価である。衝突検出モデルの性能は、テストデータにおける衝突時の二輪車乗員に対する検出率を用いて評価した。さらに、検出結果を基に、未検出および誤検出の要因について考察した。
本研究で作成した衝突検出モデルは、49件中35件(77.8%)の四輪車対二輪車事故に対して衝突時の二輪車乗員を検出した。このことから、深層学習手法を用いた画像認識技術を二輪車の衝突画像に適用することで、四輪車対二輪車事故が記録されたドライブレコーダ画像に基づく、二輪車乗員の衝突検出の実現可能性が示された。しかしながら、画像データごとの平均検出率は48.0%であり、先行研究の交通弱者を対象とした衝突検出モデルと比較して低い値を示した。この要因として、交通弱者との事故ではあまりみられない特徴的な二輪車事故(検出対象者の身体の一部のみが写る事故、車両間の相対速度が高く、衝撃が軽微な事故、衝突時に大きな衝撃が自車に加わる事故)の存在が挙げられた。これらの事故では、衝突時の二輪車乗員に関する情報が不十分、あるいは画像が不鮮明となることによって、衝突時の二輪車乗員の衝突検出が困難になったと考えられる。
抄録全体を表示