日本交通科学学会誌
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自転車運転シミュレータの開発と高齢者の交通事故誘発要因の検討
半田 修士オマル バハルディン ビン松井 靖浩及川 昌子水戸部 一孝
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2016 年 15 巻 3 号 p. 44-51

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抄録

平成26年度10月1日現在、国内総人口は1億2708万人と、平成23年から4年連続の減少であった。しかし、65歳以上人口は過去最高の3300万人となっており、総人口に占める割合も、26%と過去最高となった。国内総人口が減少していることから、今後も高齢者の割合が増加し続けると予想されている。一方、状況別交通事故死者数において、自転車乗用中に交通事故に遭い亡くなっている人は、歩行中、自動車運転中に次いで3番目に多いことがわかっている。そして、自転車乗用中の年齢層別死者数を調べると、高齢者の割合が最も高く、自転車乗用中の高齢者の事故防止の取り組みは重要な課題である。本研究では、自転車運転中の交通事故誘発要因を評価するための自転車運転シミュレータを開発した。この装置は、バーチャルリアリティ技術(VR技術)で仮想交通環境を構築しており、疑似的な車道横断により車道横断時の事故を誘発している要因を検討することができる。仮想交通環境では、複数台の車両が不等間隔で接近する。ここでは、自転車乗員が路側帯を走行し、車道を横断する際に後方より接近する車両を最接近車両とし、最接近車両と自転車乗員との距離および最接近車両の走行速度より到達予想時間を算出した。本システムを用いて、高齢者および若年者各10名を対象に自転車乗用時における車道横断時の行動を計測した。その結果、交通事故発生率では、高齢者は横断開始直後の手前車線で事故が多く、40km/hの条件においては2.4%、60km/hの条件においては2.3%であった。また、横断直前3秒間における後方確認時間を解析した結果、高齢者において手前車線で事故に遭った検査参加者〔平均0.81秒(標準偏差0.06秒)〕と事故に遭わなかった検査参加者〔平均0.66秒(標準偏差0.29秒)〕で後方確認時間に有意な差はなかったが、手前車線で事故に遭った検査参加者は横断直前1秒間には正面を向いていた。理想的な後方確認ができていないため事故にあった可能性を示した。

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