日本交通科学学会誌
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滋賀県における自転車死亡事故例の分析と事故予防対策
足助 洵田中 克典井上 拓也一杉 正仁
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2017 年 16 巻 2 号 p. 29-37

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抄録

平成25年と26年に滋賀県で発生した全自転車死亡事故28例(平成25年14例、平成26年14例)を対象に、損傷内容、各死亡事故状況、事故原因を総合的に検討した。さらに、検討結果を全国で発生した自転車死亡事故例と比較した。対象は男性が21人、女性が7人で平均年齢は66.9歳(±18.4歳)であった。60歳以上の事故死亡率は75.0%(21人)であり、全国における60歳以上の事故死亡率72.4%(830人)と同様の傾向であった(p>0.05)。死因が頭頸部損傷であったのが60.6%(17例)と、全国の死亡例での68.5%(785例)と同様であった(p>0.05)。事故類型を大別すると、車両との接触事故の割合が57.1%(16例)、単独事故の割合が39.3%(11例)、電車との接触事故が3.6%(1例)であった。この結果を全国と比較すると、車両との接触事故は全国の84.6%に比べて有意に低く、単独事故は全国の14.3%に比べて有意に高かった(p<0.001)。単独事故の詳細な分類では、3例が運転者の体調不良に起因しており、また用水路等に転落した事例の割合が72.7%(8例)と高率であった。このうち5例(62.5%)でアルコールが検出され、その平均血中濃度は1.7mg/mlであった。本検討はわが国の一定地域における自転車死亡事故例を医学的視点から検討し、予防対策を立案した初めての報告である。運転者に対しては、飲酒運転を予防するために取り締まること、体調不良による事故の予防に努めること、頭部損傷を防ぐべくヘルメット着用を推進することが有効である。また、環境面では滋賀県に多い転落事故を防ぐために、ガードレールや用水路への蓋の設置、街灯や反射板の整備といった対策が有効と考えられた。

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© 2017 一般社団法人 日本交通科学学会
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