認知症ケア研究誌
Online ISSN : 2433-4995
ISSN-L : 2433-4995
男女別にみた認知症高齢者の病前性格とBPSDの関連
野末 波輝 薬袋 淳子成 順月
著者情報
キーワード: 認知症, BPSD, 病前性格
ジャーナル オープンアクセス

2020 年 4 巻 p. 1-11

詳細
抄録

【目的】認知症高齢者の病前性格とBPSDとの関連を男女別に明らかにする。【方法】病院に入院、または施設に入所しているBPSDを有する認知症高齢者と、そのキーパーソン216名を対象に、質問紙調査を実施した。BPSD12項目は担当の職員または認知症認定看護師に記入を依頼し、当事者の病前性格は日本語版Ten Item Personality Inventoryを用いて外向性、協調性、勤勉性、神経症傾向、開放性の5つに分類し、キーパーソンから回答を得た。男女別に属性とBPSD12項目との関連をカイ二乗検定で調べ、病前性格とBPSD12項目との関連はスピアマン相関係数を算出し調べた。BPSDの有無を従属変数とし、単変量解析でp<0.1の変数を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】認知症高齢者121名に関する回答が得られた(回収率56%)。多重ロジスティック回帰分析の結果、男性では外向性傾向の性格はうつ(OR=0.54:95%CI 0.36-0.81)や不安(0.75:0.57-0.97)になりにくく、勤勉性傾向の性格は、うつ(0.73:0.53-0.97)になりくいが、脱抑制(1.88:1.32-2.67)を起こしやすく、協調性傾向の性格は食異常(1.60:1.17-2.12)、神経症傾向は易刺激性(1.47:1.10-1.97)を起こしやすく、開放性傾向の性格はうつになりにくかった(0.45:0.21-0.95)。女性では、外向性傾向の性格は易刺激性(1.27:1.06-1.52)、協調性傾向の性格はアパシー (1.68:1.24-2.26)と食異常(1.49:1.15-1.92)を起こしやすく、神経症傾向の性格は易刺激性(1.26:1.03-1.53)、勤勉性の性格は脱抑制(1.39:1.10-1.76)を起こしやすかった。【結論】男女別における病前性格とBPSDの関連が示唆され、BPSDの各症状に対する予防的取り組みや対処方法など検討できると考える。

著者関連情報
© 2020 著者に帰属
次の記事
feedback
Top