抄録 決められた期間内に研修歯科医が歯科医師臨床研修を終えるためには,目標達成に向けたモチベーションの持続が,重要な要素の一つである.しかし自己評価の頻度が研修歯科医のモチベーションに与える影響は明確になっていない.そこで過去3年間の歯科医師臨床研修修了時に行ったルーブリック評価結果を用いて,研修歯科医の自己評価の頻度が彼らのモチベーションに与える影響を検討した.
2019,2021および2022年度に長崎大学病院の管理型歯科医師臨床研修プログラムにて,1年間を通して歯科医師臨床研修を行った合計71名の研修歯科医を対象とした.研修開始時に設定した目標の達成状況を評価するために,指導歯科医が作成した共通ルーブリックと各研修歯科医が作成した個人別ルーブリックを用いて定期的に自己評価を実施した.2019,2021年度はそれぞれ年3,4回,2022年度には毎月自己評価を実施した.その後研修修了時には,目標設定,自己評価やモチベーションに関するルーブリック評価を実施した.その結果,毎月自己評価を実施した2022年度では,ほかの2年と比較してルーブリック評価項目のすべてにおいて評価が高かった.特に「目標評価の進め方が理解できた」と「モチベーションが持続できた」は,2019年度と比較して2022年度では統計学的に有意に評価の向上がみられた.歯科医師臨床研修において研修歯科医がルーブリックを用いて毎月自己評価をすることは,研修歯科医のモチベーションの持続に効果があることが示唆された.