日本歯科医学教育学会雑誌
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最新号
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原著
  • 水橋 史, 水谷 太尊, 佐藤 聡, 辻村 麻衣子, 鴨田 剛司, 水橋 亮, 渡會 侑子, 中原 賢, 藤井 一維
    2026 年42 巻2 号 p. 29-36
    発行日: 2026/08/20
    公開日: 2026/08/20
    ジャーナル 認証あり

     抄録 アクティブラーニングは,一方的な講義を聞くだけではなく,能動的な学習活動を行うことで,より深い理解と応用能力の涵養につながるとされる.日本歯科大学新潟生命歯学部では,第3学年歯科症候学演習にTBL(Team-Based Learning)によるアクティブラーニングを取り入れている.今回,TBL実施後の学生アンケート結果を評価した.対象は,本学の2024年度第3学年(68名)とした.TBLの構成は,演習前の個別学習,iRAT(Individual Readiness Assurance Test),tRAT(Team Readiness Assurance Test),演習,事後学習,チーム評価である.実施課題は,歯性感染症,小児のう蝕,摂食嚥下障害,不正咬合などであった.TBL実施後に,学生へのアンケート調査を行った.調査項目は,①積極的に予習しましたか,②積極的にグループ学習しましたか,③公平にグループメンバーへのフィードバックをしましたか,④積極的に課題についての事後学習をしましたか,⑤歯科症候学演習は有意義でしたか,⑥自由記述,とした.自由記述については,ワードクラウド分析を行った.アンケート調査の結果,項目②,③,⑤について,7割以上の学生が「はい」と回答していた.ワードクラウド分析の結果,「話し合う」「臨床」「出し合う」「学ぶ」のワードが頻出していた.本結果から,TBLはグループ学習の意義やコミュニケーションの重要性に気づき,コミュニケーション技能や学習へのモチベーションの向上につながったと評価できる.

  • 鈴木 一吉, 後藤 君江, 原山 裕子, 古川 絵理華, 上田 祐子, 渥美 信子, 犬飼 順子
    2026 年42 巻2 号 p. 37-52
    発行日: 2026/08/20
    公開日: 2026/08/20
    ジャーナル 認証あり

     抄録 近年,医療・保健・福祉分野において多職種連携の重要性が高まり,多職種連携教育(Interprofessional Education:IPE)が推進されている.本研究は,歯科衛生士養成課程における4職種混成のグループワーク型IPE合同授業を対象に,行動目標(Specific Behavioral Objectives:SBO)を枠組みとして,その学修成果を明らかにすることを目的とした.対象は臨床実習前段階にある短期大学歯科衛生学科2年生94名で,薬学・看護・栄養系学生と混成したグループワーク型IPE合同授業に参加した.授業前後に質問票調査を実施するとともに,授業後に回収した自由記載回答については,生成AIを補助的に活用して整理・分類し,量的結果と照合して分析した.量的結果では,他職種理解や協働志向の向上に加え,専門職アイデンティティの形成や,学部・学科・学校間および職種間の心理的障壁の軽減が認められ,態度・認識に肯定的な方向への変化が確認された.自由記載回答からは,多職種とともに学修する過程での気づきや自己認識にかかわる学修経験が示されていた.以上より,グループワーク型IPE合同授業は,臨床実習前段階の歯科衛生学生に対し,多職種連携を支える基盤的な態度や認識の形成に資する教育方法の一つとして有用であることが示唆された.

  • 二宮 一智, 辻村 麻衣子, 水橋 史, 渡會 侑子, 吉岡 裕雄, 鴨田 剛司, 井口 麻美, 佐藤 聡, 中原 賢
    2026 年42 巻2 号 p. 53-60
    発行日: 2026/08/20
    公開日: 2026/08/20
    ジャーナル 認証あり

     抄録 歯学部初年次におけるシネメデュケーションが,認知症を含む高齢患者への共感およびプロフェッショナリズム意識に与える影響を検討することを目的とした.日本歯科大学新潟生命歯学部第1学年81名を対象に,映画『長いお別れ』(2019年)を約50分に編集した映像を視聴し,視聴後に5~6名の小グループで討議を行った.授業開始時(Pre)と終了時(Post)に14項目の自己評価式質問票(Likert 1~5)と自由記載を回収した.定量データは対応のあるt検定で解析し,補助解析としてHolm法による多重比較補正と効果量(Cohen’s dz)を算出した.自由記載はテーマ分析を行った.その結果,未補正では14項目中9項目で有意な上昇を認め,Holm補正後も7項目で有意差が保たれた.特に,患者・家族の立場を具体的に想像する力,非言語的コミュニケーションの重要性,学習動機,プロフェッショナリズム意識に関連する項目で比較的大きな変化が認められた.自由記載では,認知症の理解,自分事化・将来像,共感の深化に関する記述が増加し,定量結果とおおむね整合した.以上より,映像視聴と小グループ討議を組み合わせたシネメデュケーションは,初年次の情意領域学習を促進し,認知症ケアに関連する共感・プロフェッショナリズムの涵養に寄与しうる可能性が示唆された.

調査報告
  • 楠 博, 志水 秀郎
    2026 年42 巻2 号 p. 61-66
    発行日: 2026/08/20
    公開日: 2026/08/20
    ジャーナル 認証あり

     抄録 本研究は,第115回(2022年)から第119回(2026年)までの歯科医師国家試験を対象に,医科・歯科共通分野の問題の出題傾向とその教育学的意義を検討した.全問題を精査し,医科・歯科共通分野の問題を抽出後,内科13領域に加え,小児・発達,救急医学,皮膚科を加えた計16領域に分類した.分類には生成AIを用い,最終判断は著者らが行った.その結果,医科・歯科共通分野の問題は5年間で計379問,全問題の21.1%を占め,必修問題では32.3%と高率であった.分野別では感染症が最多(13.2%)であり,神経内科,小児・発達,循環器がこれに続いた(それぞれ約10%).さらに内分泌・代謝,老年病,呼吸器も一定数認められた一方,消化器は5年間で4問ときわめて少なかった.歯科分野別では口腔外科および歯科麻酔との関連が強く,血液・リウマチは口腔外科,循環器・呼吸器・救急医学は歯科麻酔からの出題が多かった.これらの結果は,歯科医師に求められる全身管理能力を反映するとともに,出題傾向が歯科診療に直結する領域に偏ることを示している.また,出題形式は医学の臓器・疾患中心型とは異なり,偶発症対応など臨床実践能力を重視する特徴を有していた.これは,歯学が外科的処置を包括する横断的学問であることに起因すると考えられる.以上より,歯科医師国家試験の医科・歯科共通分野の問題は歯学特有の教育体系を反映しており,今後は出題傾向に留意しつつ,社会的実態・要請を反映した体系的教育の充実が求められる.

  • 原 矢委子, 永坂 哲, アスリ ジャヤワルディナ
    2026 年42 巻2 号 p. 67-77
    発行日: 2026/08/20
    公開日: 2026/08/20
    ジャーナル 認証あり

     抄録 国際化が進展するなか,日本の歯科医学英語教育は重要性を増しており,文部科学省歯学教育モデル・コア・カリキュラムは,国際医療に通じる歯科医師育成を目標に掲げている.歯科医師国家試験には英語問題が2010年から導入されたが,その出題内容と歯科医学英語教育カリキュラムの実施状況を関連づけて検討した報告はほとんどない.

     本研究では,2010年から2025年までに出題された歯科医師国家試験英語問題全22問について,出題内容,専門知識および英語知識要求度を分析した.また,全国29歯学部の歯科医学英語教育カリキュラムについて公開情報をもとに調査し,今後の教育の方向性について検討した.その結果,英語問題は問題総数年平均361.3問に対して年平均出題数1.4問(0.4%)と極小ながらも,英語知識要求度では文脈理解を必要とするスコア3以上の問題が多数を占め,専門知識要求度においても歯科医学的概念の理解を必要とする問題が一定数認められた.よって英語問題では単なる英単語の知識のみではなく,歯科医学的内容を英語で理解・解釈する能力が求められる傾向が示唆された.また,3年次以降も専門科目と関連した英語教育を実施している大学は29校中10校(34.5%)であった.今後の歯科医学英語教育では,低学年での一般英語教育にとどまらず3年次以降も専門科目と英語教育を接続した継続的なカリキュラムの整備が必要であると考えられる.

紹介
  • 加藤 彰子, 稲垣 幸司, 水谷 誠, 本田 雅規
    2026 年42 巻2 号 p. 78-84
    発行日: 2026/08/20
    公開日: 2026/08/20
    ジャーナル 認証あり

     抄録 目的:歯の解剖学は,歯の形態理解と歯種鑑別能力の習得に重要であるが,歯学部教育において抜去歯に直接触れて学修する機会は減少している.本研究では,愛知学院大学歯学部口腔解剖学講座に寄贈された抜去歯を教材として歯の鑑別実習を実施し,その教育的効果を探索的に検討した.

     対象および方法:2025年夏季休業期間中に実施した課外実習に参加した歯学部学生10名のうち,実習前・実習後アンケートの両方に回答した7名を分析対象とした.実習では,抜去歯を用い,乳歯・永久歯の鑑別の後,①歯種,②上下顎,③同一歯種内での順位の順に鑑別した.教育効果の検討として,10段階評価による量的データを記述統計およびWilcoxonの符号付順位検定により分析し,自由記述は内容分析により検討した.

     結果:実習前アンケートでは抜去歯に触れる経験がほとんどなかった学生が7名中5名であった.歯種鑑別の重要性の認識は高かった一方で,歯の形態観察に対する自己評価は低かった.歯種鑑別に対する自信度は,実習前(中央値4)と比較して実習後(中央値8)で有意に向上した(p=0.017).自由記述からは,歯の形態的多様性への気づきや鑑別手順の理解,学習意欲の向上などが抽出された.

     結論:抜去歯を用いた歯の鑑別実習は,歯の形態的多様性の理解を促し,歯種鑑別に対する自信の向上に寄与する可能性が示された.本研究は,抜去歯を活用した歯の解剖学教育の有用性を検討するための基礎的知見を提供するものと考えた.

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